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糖尿病内科

糖尿病のメカニズムを解説します[東中野のクリニックです]

2023.12.10

糖尿病は治療を怠ると単体でも生活に支障をきたす病気ですが、さらに合併症など他の重大な病気を引き起こす可能性もあります。この記事では、糖尿病になると起こる症状や糖尿病になる原因、病気のメカニズムについて解説します。

糖尿病のメカニズムを解説します|はじめに
糖尿病のメカニズムを解説します|糖尿病になると人はどうなるか
糖尿病のメカニズムを解説します|糖尿病になる原因は?
糖尿病のメカニズムを解説します|インスリンの作用するメカニズム
糖尿病のメカニズムを解説します|まとめ

糖尿病のメカニズムを解説します|はじめに

糖尿病は遺伝的な要素もありますが、運動不足などの生活習慣によって誰もが罹る可能性のある病気です。

また糖尿病は放置しておくとその他の病気を誘発する可能性が高くなる厄介な病気であり、その例としては糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害といった「三大合併症」が有名です。

この記事では、身近な病気でありながら罹った当人でないと詳しく理解する機会のない糖尿病のメカニズムについて解説していきます。

発症すると表れる症状・合併症や原因、インスリンとの関係性などについて紹介するため、最近生活習慣が乱れがちであったり、健康診断の結果が思わしくなかったりという状況で不安な方、糖尿病について詳しく理解しておきたいという方はぜひご覧ください。

なお今回は糖尿病と動脈硬化の関係性については詳しく取り上げていないため、気になる方はこちらのような記事をご参照ください。

糖尿病のメカニズムを解説します|糖尿病になると人はどうなるか

糖尿病は初期段階において自覚症状が表れにくい病気と言われています。

それでもわずかな異変から早期に気づくことができる可能性もあるため、ここでは糖尿病の可能性が考えられる症状について、また合併症についても取り上げます。

症状について

糖尿病の初期に表れる症状としては、疲れやすい・やる気が出ない、太る(逆に痩せる場合もあり)、濃い味を好みやすくなる、視力が低下する、タコ、魚の目、イボなどのできものができやすくなる・治りにくくなる、痺れ・むくみが起きやすくなる、喉が乾きやすくなる、頻尿になるといったものが挙げられます。

また免疫が低下するため、歯周病を発症しやすくなるというのも糖尿病の人の特徴です。

歯周病はインスリンの働きを鈍化させてしまうため、糖尿病をさらに悪化させてしまう可能性があります。

糖尿病には上記のような悪循環や、高血糖によってさらに高血糖な状態に陥る「高血糖による毒性」など、様々な悪循環の要素が含まれています。

そのため早期に発見し、悪循環になる前に根本原因に対して正しい治療でアプローチしていく必要があります。

合併症について

冒頭で紹介したように、「三大合併症」として糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害が有名です。

糖尿病網膜症は眼の網膜にある細い血管に起こる障害で、進行すると失明する可能性があります。また自覚症状なく進行することがほとんどであるため、早急に原因となる高血糖状態を改善しなければなりません。

糖尿病腎症は腎臓にある細い血管に起こる障害で、結果として腎臓の機能が低下します。

同じく自覚症状が出づらい障害で、進行するとむくみや貧血、高血圧などを発症し腎臓の機能も奪われ、最終的には透析治療が欠かせない状態となります。

糖尿病神経障害は、足先・裏、手の指に痛みやしびれの症状があらわれることを指します。

左右対称にあらわれるという特徴があり、痛みが慢性化したり、症状が進行することで痛みがわかりづらくなり足潰瘍や足壊疽になってしまう場合もあります。

三大合併症は「細小血管症」とも呼ばれますが、他にも「大血管症」に含まれる動脈硬化や、免疫低下による感染症への感染、脂質異常症、骨粗鬆症、歯周病、がん、サルコペニア(筋力低下)といった病気になる可能性も高くなります。

このうち特に動脈硬化は狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患といった重大な病気の原因となる疾患です。

心疾患や脳血管疾患は悪性新生物(がん)を含め、近年の日本人の死因のトップ3(老衰を除く)に入る病気であり、早期発見が非常に重要となってきます。

しかし何度も述べているように糖尿病は自覚症状の出づらい病気であるため、健康診断などを受けて兆候の有無を調べ、発覚した際には正しい早期治療をおこなう必要があります。

東中野駅近周辺で糖尿病の検査や治療ができるクリニックを知りたい方は、ぜひこちら[公開された140の記事へのリンク貼る予定]の記事をご参照ください。

糖尿病のメカニズムを解説します|糖尿病になる原因は?

糖尿病には大きく2つのタイプがあり、それぞれ原因が異なります。詳しいメカニズムについて解説する前に、どのような人が糖尿病になるのかを紹介していきます。

1型糖尿病

膵臓のランゲルハンス島という部分に炎症が起こって、インスリンを作る膵β細胞が壊された結果インスリン不足となり血糖値が上がるタイプの糖尿病です。

糖尿病は肥満の人が発症するイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、1型は痩せ型の人でも発症します。

実は1型糖尿病を発症する明確な原因はわかっておらず、遺伝的な要素に加えてウイルス感染やストレス過多によって免疫機能が本来とは異なる作用をしてしまうことが原因と考えられています。

自己免疫は本来、体に入ってきた細菌やウイルスを攻撃して守る役割を持っていますが、様々な起因によって膵β細胞を攻撃対象としてしまう状態がこの1型です。

90%程は自己免疫が関与する「1A型」に分類されるものであり、残り10%は突発性の「1B型」となります。

1型は「緩徐進行1型糖尿病」「劇症1型糖尿病」という分類をされあることもあります。

緩徐進行1型糖尿病は、当初2型糖尿病のような状態で発症したものの少しずつ1型の特徴が表れてくるため2型と誤診されることもあります。

劇症1型糖尿病は、初めて高血糖値の状態になったかと思えばその後急激に症状が悪化するものです。

なお日本人において1型を発症することは少なく、北欧諸国に多く見られるという地域差がある他、日本国内においては女性の方が多い傾向にあります。

ただし欧米では若干男性の方が多い結果となっています。

さらに若年に発症することが多く、思春期以降は発症率が低下するという結果は出ているものの成人以降で発症する例もあります。

このように1型は傾向に関しても一概には言えない状況です。

次に紹介する2型のように生活習慣によって発症するものでもなく、原因がはっきりしない部分が多いため予防も困難というのが実情です。

ただし万が一発症してしまった場合も、早期に治療を始めて血糖値をコントロールし続けていけば健常な体とほぼ同程度の状態で過ごすことができます。

2型糖尿病

日本人に多いタイプの糖尿病で、中高年や肥満の人が多く発症する傾向にあります。また1型よりも自覚症状が表れづらく、気づかないうちに進行していることが多いです。

原因は遺伝の可能性も考えられていますが、食べ過ぎや運動不足、不規則な生活リズムといった生活習慣やストレスが直接の原因である可能性が高いと見られているタイプです。

一見肥満には見えない人でも、内臓に必要以上の脂肪がついてしまうメタボリックシンドロームの状態になっている人が発症することもあります。

次のインスリンのメカニズムでも詳しく紹介しますが、この2型はさらに、インスリンの分泌量が不足または出なくなったり、分泌されるタイミングが悪かったりという「インスリン分泌低下」、分泌はされるものの十分に作用しなくなる「インスリン抵抗性」の2種類に分類されます。

2型の場合は生活習慣が関与する可能性が高いため、医師による治療とあわせて生活習慣の改善を続ける必要もあります。

また予防法としては、普段からバランスの良い食生活を摂る、適度な運動をする、ストレスを発散する、規則正しい生活をするということが効果的になります。

その他タイプの糖尿病

糖尿病は上記に挙げた1型、2型に分類できるものの、細かく見ると実は他にも種類があります。

一つは「妊娠糖尿病」です。これは妊娠中に発覚した糖尿病には至っていない糖代謝異常の状態を指しますが、将来的に糖尿病になりやすくなると言われています。

赤ちゃんに十分な栄養を与えようとすることで高血糖になったり、インスリンを効きづらくするホルモンが胎盤から分泌されることが起因で、出産後は多くの場合で通常の血糖値に戻ります。

二つ目は特定の機序・疾患によるもので、遺伝子異常や膵臓病、内分泌疾患、肝臓病、免疫機序によるまれな病態、薬剤・化学物質、感染症などが起因する糖尿病です。

糖尿病のタイプについてはこちらでも紹介されていたのであわせてご覧ください。

糖尿病のメカニズムを解説します|インスリンの作用するメカニズム

糖尿病は1型、2型いずれにおいても膵臓とインスリンの働きに関係します。

健康な人の場合は、食事によって接種した糖質をブドウ糖に変え、体のエネルギーとして利用するため全身に送られます。

人間にとって必要不可欠なブドウ糖ですが、食事によって一時的にその量が多くなると高血糖の状態になります。これを抑える作用をするのが膵臓から分泌されるインスリンなどのホルモンです。

膵臓のランゲルハンス島という部位を構成するβ細胞で血糖値が上がったことを感知し、必要な分のインスリンを分泌するという仕組みです。

インスリンには血糖値を抑制するだけではなく、ブドウ糖を細胞に取り込む役割もあります。ホルモンには、他にグルカゴンやガストリンなどがあります。

なお、ブドウ糖の量=血糖値と考えてもらって問題ありません。

それに対して糖尿病患者の場合は、食事で高血糖となっても十分なインスリンが分泌されなかったり、分泌されても作用が少ないことによって血糖値が下げられない状態になります。

それでも人間の体は危険な高血糖の状態をなんとか下げようとしますが、それが起因となって様々な症状を引き起こすというメカニズムです。

2型は「インスリン分泌低下」と「インスリン抵抗性」の2タイプがあることを前述しましたが、前者は膵臓の機能が低下することによって必要な量のインスリンが分泌できなくなってしまう状態を指します。

後者はインスリンは十分に分泌できているものの、うまく作用しない状態を指します。

この2タイプはどちらか一方に偏るというわけではなく、両立していることもあり、その症状の優位性によって治療方針なども変わってきます。

また症状が進行して空腹時を含め慢性的に高血糖の状態が長く続くようになると血管・臓器に障害をきたし、三大合併症を発症することとなります。

三大合併症は進行によって発症するため「慢性合併症」とも呼ばれますが、その対照として「急性合併症」というものもあります。

糖尿病薬の副作用としての低血糖症や意識障害、糖尿病昏睡などが急性合併症に該当します。

なおこちらのPDFでは糖尿病のメカニズムについて図や表などを使って説明されていたためあわせてご覧ください。

糖尿病の情報が総合的にまとめられた「患者さんのための糖尿病ガイド」もぜひご覧ください。

糖尿病のメカニズムを解説します|まとめ

  • 糖尿病は自覚症状が表れにくい病気
  • 糖尿病が引き起こす障害によって悪循環に陥りやすい病気でもあり
  • 健康診断などでの早期発見、早期治療が重要
  • 糖尿病の原因ははっきりしない部分が多いものの、1型糖尿病はウイルス感染やストレス過多、2型糖尿病は生活習慣が原因として濃厚とされている
  • 糖尿病のメカニズムを端的に表すと、インスリンが高血糖を抑制できなくなったことで様々な障害を引き起こすという状況

なおこちらのサイトでは糖尿病の看護に焦点を当てた内容が紹介されていたので、あわせてご覧ください。